調査物語

準大手・中堅ゼネコンのテレビCM

建設業界は高齢化、若者離れ、人材不足が深刻な問題となっており、建設業界のイメージは「きつい」「汚い」「危険」で、そもそも入りたい若者がいない。若手人材が入社しても、長時間労働、過酷な現場業務、昭和体質の上司同僚に辟易して、すぐに辞めていくという現状だ。総務省の労働力調査によると、2022年の建設業従事者479万人と、ピークだった1997年の685万人から3割以上減少している。
2024年度からは時間外労働の上限規制が適用されることから、人材確保が経営課題となってくる。その人材確保のために準大手・中堅ゼネコンはテレビCMをはじめとした広告戦略を打ち出している。

最近、テレビCMで良く見かけるのが、中堅ゼネコンの西松建設、熊谷組、奥村組のCMだ。
西松建設は、テレビCM以外にマラソンイベントや歌舞伎公演などの協賛での露出を増やしている。テレビCMは
4月から男性社員「西松くん」のCM2種類の放映を始めた。横浜湘南道路のシールドトンネル現場やJR中野駅南口の高層ビル現場に関わりながら、社会人として成長する姿をイメージしたテレビCM。テレビCMは1988年以来35年ぶりだそうだ。

熊谷組もテレビCMの放送を始めた。2022年7月から、川口春奈さんを起用したCMの放映を開始。10月以降はフジテレビ系列の全国放送「ジャンクSPORTS」「奇跡体験!アンビリバボー」に番組提供を行っている。社員が出演するCMは30年ほど前にあったというが、詳細な記録は残っていない。

関西地盤の奥村組は2016年に自社施設のPRでメディアを活用したことをきっかけに、2018年3月期から「攻めの広報」を掲げ、1億円前後で推移していた広告宣伝費を6億円超に引き上げた。2018年1月から大阪国際女子マラソンの1社協賛を引き受けたほか、同マラソン向けに女性社員「奥村くみ」を登場させたテレビCMの放映を始めた。視野に入れているのは首都圏での受注営業だ。CMは現在2番組の提供を行うほか、大阪国際女子マラソン以外にもギターイベントや歌舞伎公演での協賛を手掛けている。

大手ゼネコンでは2010年後半から大成建設がアニメ映画監督の新海誠さんを起用し、海外の大型現場で働く社員を主人公とした短編アニメ風CMが話題に。大林組は2021年から佐藤健さんを起用した「おおばや氏」を通じて自社の先端技術を取り上げている。
ゼネコンの広告宣伝費を見てみると、ゼネコンはバブル期に大手がCMを強化し、大手4社(鹿島建設、大成建設、清水建設、大林組)と準大手を加えた各社の広告宣伝費の合計は1992年3月期に200億円を超えた。ただ、それ以降ゼネコン汚職によるイメージ悪化やバブル崩壊後の公共投資冷え込みで各社は広告宣伝費を縮小。2015年3月期には各社合計で40億円程度に落ち込んだ。それが2022年3月期の各社の広告宣伝費合計は100億円を超えるまでになった。ゼネコン各社の広告宣伝費のお金の掛け方やテレビCMの放映を見ると、各ゼネコンの高齢化、若者離れ、人材不足の危機感による対策がよくわかる。(日経MJより)

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