設計事務所を訪ねて

設計士の本音と建前

昨今は建材の値上げが続き、建築コストの増加は建材選定面で設計士にも無関係でなく、設計事務所に行くと何らかでそういった話になります。弊社では設計事務所へ訪問しており、そこでのやり取りをお伝えしたいと思います。

建材のテストマーケティングはスリリング

「うーん。」と唸って設計士が意匠性建材のサンプルを手に取って見つめながら数分が経ちます。そして建材のカタログを読み込む。そしてまた、建材サンプルを見つめるの繰り返しです。弊社のKJ-NETから抽出した高齢者福祉施設物件の設計を担当する設計士が真剣に考えてくれているのがひしひしと伝わってきます。私はどのタイミングで説明しようかと機会を見計らっていると、設計士は「いいと思いますが・・・」と一言。「この商品にはスチールワイヤ品はありますか?」と聞かれ、「そのような仕様は今はありません」と答えると、「そうだとすると、この物件には厳しいかな・・・」とポツリ。そして、「隣接する建築物と近いので、火災発生時の崩落防止の為にガラスはスチールワイヤが入った物を選ばなければならないんです。あと、意匠面ですけど・・・」と続けざまに色々お話頂く内容を手帳へ速記するのに必死になる私。結局、設計士から「検討はしてみますが、もっとバリエーションを増やした方が良いと思いますよ」と言われ、設計事務所を後にしました。建材のテストマーケティングであちこち設計事務所へ伺っていく中で、私は「何らかの商品評価と手応え」を得て会社へ戻るのですが、その道中で過去の「ある言葉」が蘇ってきます。それを考えると、「今日はまだマシな方かな・・・」と思えるのです。

メーカーさんの訪問は半年に一回でいいよ

かつての私は設備メーカーの企画部門にいました。「商品の企画をするにはユーザーニーズを知らなければならない」と思い、営業担当に同行して設計事務所やサブコン、ゼネコン、商社、デベロッパーへ訪問しました。訪問先の担当者を営業担当に紹介してもらい、商品の評価や採用意向を聞くと、「良いと思いますよ」、「必要になったら連絡しますから」と言われるばかり。玉虫色の回答やそっけない言葉ばかりです。そんな中で、とある設備設計士から、「そんなに頻繁に来なくても大丈夫ですよ。半年に一回位でもいいかな。商品の事は大体分かるから」と言われました。営業担当は社内にずっといると上司から睨まれ、外回りに行けば、お客様から「はいはい、ご苦労様」、「そんなに来なくていいですよ」とあしらわれる。それでも何とか引き合いをもらって売上を作る訳ですが、営業担当も設計士も多忙であり、営業担当は「設計士が本当に必要としている商品」について深く話を聞ける状況ではありません。

商品を採用しない理由が知りたい

建材メーカー様に成り代わって、第三者的に設計事務所へ訪問すると、色々な話を聞く事が出来ます。持参した建材商品のサンプルを手にしながら、設計士は採用した際の完成イメージやメリット/デメリットを思い浮かべるのだと思います。そもそも、建築物は建材ありきではないので、コンセプトに合致するか、必要視する機能性や意匠性を持ち合わせているか、コスト面は許容出来る範囲にあるか、様々な側面から検討しますが、真摯に検討頂く設計士には頭が下がる思いです。そんな中で、設計士が建材の評価に困っていそうな時は、敢えてその商品の悪い点や気掛かりな事を聞くようにする事もあります。商品が良ければ何らかの評価も即座に出てくると思いますが、評価に困る場合は何らか言いにくい事があると思うからです。商品の悪い点、改善要望を知る事は、今後に活かせる内容ともなります。

設計士は多くの建材提案を求めている

メーカーか、マーケティング会社かによって応対は違えども、基本的に設計士は様々な建材の提案を求めているのだと思います。弊社はその建材商品を買って頂く立場ではなく、時には辛辣な話をされる事もあります。でも、辛辣な事を言うのは真剣に考えてくれているからです。建材メーカー様からご依頼を頂く事、設計士のアポ取りの際に「今回は何の建材ですか?」と聞かれる事はとても光栄な事です。  【担当:相馬 義輝】
 

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