COVID-19も沈静化に向かい、暖かな日差しが心地良い季節となって参りました。弊社は設計事務所の建築士様が必要視する建材、設備機器について把握/理解し、建材メーカー様や設備機器メーカー様へ提案する為に訪問ヒアリングを続けております。
今後に新設拡大が有望視される建築物
弊社のクライアントが開発した建材商品のニーズについて建築士へ伺い終え、建築業界の今後について雑談的な話をする時、必ず伺うようにしている質問があります。それは「今後の建築業界の動向」です。概ね2025年位までは受注残も含め、建築需要は続くと見られますが、その後をどう推察しているのか。非常に気になる内容ですが、建築士の担当する業界やジャンルによって異なる傾向があります。一般的な話として、ネット通販や5Gの普及に伴って流通センターやデータセンター等の施設が増えているのは現実です。しかし、今後にそれらの施設が2倍、3倍の規模で増えていくと見ている建築士にお会いした事はありません。概ね2000年頃に黎明期を迎えたEC(電子商取引)の市場ですが、当時は与信管理や物流関連のサービスが伴わずに低迷し、企業間における電子取引市場(e-MARKETPLACE)も盛り上がりを見せたものの、各社とも収益となる充分なトランザクションフィーを得られず、閉鎖するサイトが続出しました。その当時から、今のEC市場の活況を予測する事は困難だと思います。つまりは、如何に決済や物流といった実際の商取引に即したサービスが重要であるかを窺い知る事が出来ます。
EC市場は物流施設が要となる
前置きはさておき、物流施設の新設を予見する建築士は比較的多くいて、「車で高速道路を走っていると建設中の物流施設は結構ありますよね」と仰る方、「大規模ではないけれども、市街地でワーカーの通勤事情を考慮した物流施設も出て来てますよ」というお話を伺う事もあります。時世を考えれば、ネット通販は便利ですし、これからも需要が伸張すると見られています。それに伴い、これまでは物流施設の建築で気にされなかった建材の需要も増すだろうと考える建築士も居られます。断熱材を始めとして、人が快適に働く為に必要な建材、ニッチな所では施設をトラックとの衝突から守るカーストッパー等の部材、換気設備等が例として挙げられます。
今後の物流施設の増設はEC化率と比例?
弊社では物流施設の今後について、物販のEC化率が関係するとも見ています。物販のEC化率とは、これまでの店頭等での取引/購入が電子商取引化する比率です。経済産業省が2022年8月に公表した物販のEC化率はBtoBは35.6%、BtoCは8.78%に留まっています。街中を走っている宅配便のトラックは数知れませんが、BtoCのEC化率が一桁台と考えると、まだまだこれから、といった感じもします。総務省統計局が調査した一般家庭の1ヵ月あたり支出分類では、食料費が最も高く30%程度を占めます。現状では生鮮食品のネット販売(ネットスーパー)は低比率ですが、それらが高まれば、更にネット通販市場は拡大し、物流施設の需要が高まります。それら生鮮食品の貯蔵では、冷凍/冷蔵設備が必須となりますので、物流施設や貨物車両に求められる内容も変容すると予見します。
建築士から見た物流施設の今後
上記のような推察を建築士とお話すると、「生鮮食品の通販化は難しいと思いますよ」との返答が多くあります。確かに、鮮度の高さが求められる日配食品は乾物と異なりデリバリーの迅速さ、低コスト化が必要です。ただ、今までもそうであったように、通販市場の拡大/進化は従来の常識を超えてきます。イオンとオカド(英)が業務提携し、2023年夏にはネットスーパー専用の物流センター「イオン誉田CFC」が新たに稼働。今後の物流施設の変容にインパクトを与えるのではないかと感じています。【担当:相馬義輝】