調査物語

久々の再会で思い出した調査

お盆明けの18日、A氏と5年ぶりに居酒屋で冷たいビールで喉を潤した。A氏とは、かれこれ40年の付き合いである。年齢は83歳。趣味は油絵、三線、バイオリン、ウィンドサーフィン、最近では若い仲間を集めて読書会にはまっているようである。顔肌のつやも良く健康そのもの。とても83歳には見えない。年に見えないのは好奇心が旺盛だからと言っている。今の私があるのはA氏が現役時代に、たくさんの調査発注をしてくれたとともに調査内容について厳しい指摘・指導をしてくれたからである。A氏は大手ゴムメーカーの化工品開発企画部の部長で20年前に退職している。
そんなA氏と一緒に仕事をしてきたテーマを思い出したので紹介したい。

ユニットバス(FRP)、24時間風呂(FRP)、免振ゴム(積層ゴム)、床暖房(温水樹脂パイプ)、その他ゴムや樹脂の化工品について調査を行った。

ユニットバスはFRP技術の応用が可能な事から、ユニットバス市場に参入すべきか否かを判断する為に調査を行った。調査項目は①市場規模の調査(建築用途別・需要先別) ②競合企業の販売動向調査(5年間販売実績推移・販売利益率・商品種類別実績・販売ルート別実績・営業体制・販促活動) ③競合企業の生産工場の調査(生産工程・生産設備・生産体制)であった。特に厳しかったのが生産工場の調査である。競合企業へ直接面接調査を行っても満足な回答を得られるには限界があり、設備機械メーカーに面接を行って何とか調査し終えた。今では、生産工場の調査はほとんど無いが、当時は、特にA氏の調査には生産工場の調査が多かった。お陰様で、調査マインド、調査力を鍛えられた。

24時間風呂については、ユニットバス同様FRP技術の応用から開発に着手した。開発を決断するにはユニットバス同様の調査を行い、その結果参入可能性ありと判断して開発に踏み切った。開発着手後に行った調査はユーザー調査。既に競合企業の24時間風呂を購入している生活者へ赴きアンケートを実施した。一方、A氏が開発した24時間風呂についてもモニタリングを行った。同時に24時間風呂施工販売店を組織する為に関東地域で協力してくれる設備業者へも面接調査を行った。着々と24時間風呂プロジェクトが進行中、突然社長からプロジェクトの中止が。理由は、レジオネラ菌の発生である。購入者の身体に影響が出るモノは駄目ということらしい。24時間風呂プロジェクトは頓挫した。残念でならなかった。

免振ゴム、床暖房もユニットバスについても24時間風呂同様に、同市場に参入すべきか否かを判断するために調査を行った。化工品開発企画部は、まずは市場性を見極めることから仕事が始まるので、常に弊社と一緒に仕事を進めていった。その化工品開発企画部が開発を決断する判断基準が以下の項目となる。①市場性(市場規模が100億円以上、50億円以上、50億円未満) ②成長性(10%以上、5%以上、5%未満) ③顧客(不特定多数、特定多数、特定少数) ④技術要素(実現可能性、将来のニーズ、差別化、技術の広がりなど) ⑤販売目標(商品、ユーザー、価格など) ⑥仮の生産工場(担当部署、生産体制、投下人員など)。それら項目を満足させた商品が開発着手となる。久々のA氏の会食で、調査した内容を思い出した。

全国建築計画物件情報「KJ-NET」概要

全国建築計画物件情報「KJ-NET」基本活用編

TOP