調査物語

 「未来を熱く」トーチタワー着工

三菱地所は2028年3月末の完成を予定する超高層ビル「トーチタワー」(東京・千代田区)の着工式を開いた。東京駅に完成すれば高さ約390㍍と、23年6月にできた「麻布台ヒルズ森JPタワー」(東京・港区、330㍍)を抜き日本一高いビルとなる。

「トーチタワー」の「トーチ」はたいまつのことで、「日本を明るくともす存在でありたい」という意味を込めたという。トーチタワー自体も、全体としてたいまつをイメージした形状になっている。トーチタワーでは建物を支える構造部材を窓の外側に配置する「アウトブレース」を全面的に採用。耐震性を高め、内部の柱の間隔を10.8㍍と一般的なオフィスビルよりも広く確保する。

歴史的にゼネコンは高層建造物の建設時に新技術や新工法を採用してきた。トーチタワーの施工は清水建設が担当する。同社は麻布台ヒルズ森JPタワーの施工も手掛けており、その際は溶接ロボットや監視ロボットなど次世代の建設技術を導入し、省人化につなげた。トーチタワーではどのような技術が投入されるか注目される。

日本の超高層ビルは半世紀以上の歴史がある。日本で初めて高さ100㍍を越えたのが1968年に完成した「霞が関ビルディング」(147㍍)だ。三井不動産が事業を主導し、鹿島などが施工した。
その後「高さ日本一」の称号は短期間で変動したが、78年に完成した「サンシャイン60」は90年に東京都庁第一本庁舎が完成するまで長く日本一の座にあった。

超高層ビルに対する世論も変化した。74年に丸の内で完成し、現在建替え中の「東京海上日動ビル本館」は東京都や国などを巻き込んだ美観の論争に見舞われた。計画時に皇居を見下ろす構図に批判が上がり、30階建ての設計案が25階建てへ変更された。今や超高層ビルはマンションにもみられ、大都市では当たり前の存在となった。
日本のビルが「スーパートール」と呼ばれる高さ300㍍に突入したのは2000年代に入ってから。14年に完成した「あべのハルカス」(大阪市)の高さはちょうど300㍍だ。

「超高層ビル」の国際的な定義はなく、まちまちだ。かつて日本の建築基準法施工令では高さが60㍍を超える建築物を「超高層建築物」とする記載があった。ちなみに日本初の「超高層マンション」は住友不動産が1976年に建設した高さ66㍍の与野ハウス(さいたま市)だ。
世界に目を向けると「上海タワー」(632㍍)やサウジアラビアの「メッカ・ロイヤル・クロック・タワー」(601㍍)など400㍍を超えるビルは少なくない。最も高いビルはアラブ首長国連邦(UAE)のドバイにある「ブルジュ・ハリファ」で828㍍を誇る。

日本でこうした「超々高層ビル」がないのは、地震や台風などの自然災害が頻発するうえ、近隣に空港があるためビルの高さ制約があるからだとされている。(日経MJより)

全国建築計画物件情報「KJ-NET」概要

全国建築計画物件情報「KJ-NET」基本活用編

TOP