2023年も早いもので12月も終盤となり、2024年を迎えようとしております。殊更に寒さが身に染みて、給湯の必要性が特に高まる季節でもあります。トイレの手洗いやオフィスの給湯室、日常生活においてもシャワーやお風呂等、快適な温かさを感じるお湯。今回は日常に欠かせない給湯器の中で「業務用電気温水器の市場性」について説明します。
業務用電気温水器は火気や排気がなく、容易に換気が出来ない高層ビルや地下街、火災の発生が許されない高齢者福祉施設で多く採用される「環境に優しい給湯器」として位置付けられます。
業務用電気温水器の種類
電気温水器の熱源は電気ヒーター式とヒートポンプ式に大別されます。電気ヒーター式は主にシーズヒーターや裸ニクロム線で給水を直接的に沸かし上げます。一方のヒートポンプ式は空気中の熱をコンプレッサーで凝縮して高温化し、それを熱源として作湯します。また、電気給湯器の給湯方式は、貯湯式と瞬間式に分かれます。貯湯式はステンレス製タンクに給水した水を沸かし上げる方式ですが、瞬間式はガス給湯器のように瞬間的に給水を沸かし上げる方式です。沸かし上げる温度の上限は、出湯の用途によって異なりますが、手洗いや洗い物であれば75℃までの機種が多く、飲用になると水の沸点に近い90℃程度まで給水を加熱します。飲用の場合は煮沸が必要になるので、より高い温度まで沸かし上げる必要がある訳です。市場全体で見れば、貯湯式で沸かし上げ温度が上限75℃までの機種が多く選ばれ、水栓金具を用いて二次給水でミキシングし、温度を調整して概ね40℃前後のお湯にします。手洗い用では、火傷対策を施して出湯温度の低い(35~40℃程度)機種も存在します。市場全体では床置式の20リットル程度の貯湯タイプが主流です。
局所給湯とセントラル給湯の違い、瞬間式温水器の台頭
近年の建築物では、お湯が必要な場所だけで給湯する局所給湯が主流となっています。以前の建築物では、ボイラー室等で大量のお湯を一元的に沸かし、建築躯体の中に給湯配管を敷設して給湯するセントラル給湯も多く見られましたが、給湯配管の中のお湯が自然放熱で冷めてしまい、「死に水」となってしまいます、常に高い給湯温度を保つには、循環加温対応の給湯器が必要となりますが、不必要な加温はエネルギーロスにもなり、環境配慮の意識も高まっている事もあって局所給湯の採用が増加しています。更に言えば、局所給湯においても「お湯が必要な時に必要な量だけ」を沸かし上げる瞬間式電気温水器のニーズが高まっているようです。ただし、瞬間式電気温水器では待機電力はほぼありませんが、水栓の使用開始時(フロースイッチON)で瞬間的に給水を沸かし上げる必要がある為、多くの消費電力を必要とします。中間期で水温が17℃程度の時に40℃程度まで沸かし上げるのに必要なアンペア数は35A程度必要で、一般家庭では殆ど使用されていません。主にオフィスビルや商業施設の手洗い用途で多用されているのが実情のようです。
業務用電気温水器の市場性
言うまでもなく、電気温水器の競合品は燃焼系の湯沸し器(ガス湯沸かし器やボイラー)が挙げられます。燃焼系湯沸し器は比較的に安価で大量/連続給湯に対応しており、瞬発性の高さや湯切れの心配がない事が利点です。大量の食事を供給しなくてはならない給食センター等では特にガス湯沸かし器のニーズは底堅く、温浴施設を有するゴルフ場やホテルといった施設では燃焼系ボイラーの採用が多い状況です。しかし、脱炭素・環境保護の観点が一般にも広く認知され、燃料価格の高騰もあり、電気温水器の需要は拡大傾向にあります。主要な参入メーカーでは、TOTO、リクシル、日本イトミック、ニチワ電機等が挙げられますが、専業メーカーの日本イトミックは小型商品から大型商品(自然冷媒採用の大型ヒートポンプ給湯器、ステンレスパネルタンクにヒーターを取り付ける大気開放タンク等)も手掛けており、競合他社をリードしています。TOTOは供給の多いパブリック向けトイレパックの導入時に電気温水器も併せて提案しており、リクシルも幅広い販路を活用してパブリック向けモデルを展開、ニチワ電機は厨房向けの販路を活かして瞬間式湯沸し器を供給しています。概ね年間10万台程度の市場規模ながら、今後はよりCO2削減対策、脱炭素社会の実現に向けて、電気温水器の市場も「熱い市場」となる事が予想されます。
【担当:相馬 義輝】
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