調査物語

トイレ革命による新産業の創造

外国人観光客がコロナ以前の記録を破る勢いで来日、日本文化の評価をリポートするものの中でトイレに言及するものが目に付く。日本のトイレが綺麗で機能的、ウォシュレットにはビックリ。公衆トイレは無料で綺麗、そして安全だと国際的な評価は高い。
東京渋谷の街、公衆トイレを取り巻く人間模様を描いた映画「Perfect Days」が第76回カンヌ国際映画祭コンペンション部門に選出され、主演の役所広司が最優秀男優賞に選ばれた話も話題になったほどである。

しばらく前までは大便用のトイレは和式が中心だった。かなり昔のことになるが都民の大便を海洋廃棄するために多数の運搬船が毎日東京湾を行き来したものだった。地方に行くと汲み取り業者が各家庭を回って汚物を回収していた。

この50年間で日本のトイレ事情は激変、外国人観光客が褒める新トイレ文化を作りあげた。西洋式トイレ革新を日本にもたらした人は大倉和親、TOTOの初代社長だ。西洋式トイレを経験し日本での普及に心血を注いだ。TOTOはウォシュレットを開発。トイレ革命のリーダーとなった。TOTOに加え、LIXILやパナソニックもトイレ革命の推進に加わり、日本のトイレ文化は今や世界から注目されるものとなった。
中国やインドでもトイレ革命が進行し、日本のトイレメーカーはトイレ革新で多くの国の人の生活水準の向上に大きな先駆的な役割を果たしているといってよい。

新トイレ文化はいろいろな副産物も生み出した。その代表がチリ紙。チリ紙はトイレットペーパーとティッシュを生み出した。マーケティング分野ではティッシュが広告媒体として広く活用され、日本独自の販促ツールとし存在するようになった。
高齢化社会の進展で今、特に求められてるのが介護老人向けの革新的なトイレの開発だ。今あるプロジェクトでは、「3歩の住まい」と呼ぶプロジェクトが進行中。要介護老人がベッドから3歩以内ならトイレも含め何とか自分のことは自分で始末できる仕組みづくりを、という声で誕生したプロジェクトだ。

「3歩の住まい」にはロボットや先端的な情報システムも登場し、患者の生活を支える様々な気配り、配慮がされており、トイレは洋式トイレでベッドから3歩離れた別室に設置されている。寝たきりの要介護者にはおむつを使用するのだそうだ。ベッドで寝たままでトイレができないか。新幹線などで見られる真空吸引式のもので処理できないかとか、いろいろアイデアが登場。防災用のトイレには介護用に応用できそうなものもある。固形化剤や脱臭材を利用するもの、それにウォーターレスのトイレも。

はるのおがわコミュニティパークトイレ(透明トイレ)

次なる社会にはトイレのない生活文化が出現するかもしれない。能登半島地震のような災害時、緊急時にはトイレがなくても済ませる生活があってよい。健康長寿、人口減少は新生活文化をこの日本に多々誕生させる起爆剤だ。この50年余に生み出した新トイレ産業をモデルに、産業人、マーケターは新生活文化と新産業の創造にチャレンジすることが求められる。

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