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陸上養殖用生簀の市場

早いもので2024年も11月を迎え、残すところ2ヵ月となりました。秋もあっという間に過ぎようとしており、冬の気配が近づいています。冬の寒さは身にしみますが、その一方で冬の料理は和食を中心として美味しく感じるものです。特に鍋料理は人気のメニューと言えます。また、冬は魚が美味しい季節でもあります。冬が旬の魚と言えば、ブリ、タラ、ヒラメ、カワハギ、フグ、あんこう、その他では牡蠣も美味しく頂けます。近年はサケ、秋刀魚、スルメイカの不漁が続いており、それらの魚の市場価格が高騰しているのは記憶に新しいところですが、今回は従来の海面漁業に依らない新たな市場とも言える陸上養殖の中で、「陸上養殖用生簀の市場」について考察してみたいと思います。

水産物生産量の大半は海面漁業が占めている

我が国における水産物生産業の動向を見ると、2023年時点で372.4万トンとなっています。これは1984年(昭和59年)の1,282万トンをピークに減少推移しており、ピーク時の29%程度まで減少しました。水産物生産量は海面漁業と内水面漁業に大別され、それぞれが更に漁業と養殖業に分類されますが、それら内訳で最も多いのは海面漁業の367.2万トンで水産物生産業の約98%を占めています。ピーク時(1984年時点)と比較して遠洋漁業と沖合漁業の減少が著しく、それぞれ半数以下になっています。それらは様々な外部要因に起因して減少していますが、水産庁が実施した不漁要因の調査では、生育環境の変化や外国漁船による漁獲が影響したとも指摘されており、地球温暖化や気候変動、政治的な影響等を眼前にして、安定した漁獲量は保証されていないのが実情と言えます。
そういった背景を踏まえ、人為的に漁獲量をコントロールしようとするのが養殖であり、海水の温度変化や赤潮の影響を受けない陸上養殖に注目が集まっています。

陸上養殖用生簀の市場規模

陸上養殖は水産物の生育環境を人為的に整え、陸地で漁業を行う為、様々な装置や設備が必要となります。水産物を生育する為の生簀、海水生成/温度調整の為の装置、その他にも様々な装置や器具が必要になりますが、その中で特に重要となる生簀の市場規模を見てみます。

陸上用養殖で使用される生簀の素材では工作自由度の面から、FRPが最も多く使用されています。かつてはコンクリート製の生簀もありましたが、ヒビ割れ等の強度の問題やコスト高である事から、樹脂製へシフトしています。サイズは直径2m程度のものから20m程度(満水量350トン程度)の物まで、事業者の規模に応じて様々な組み合わせで使用されています。

陸上養殖市場は拡大中

海面養殖を含む水産養殖業全体の生産量が88万トン程度と水産物生産量の全体からみれば23%程度に留まります。そのうちの陸上養殖の生産規模は5,000トン程度であり、水産養殖業に占める比率は0.5%程度と極めて限定的な生産量です。これは、陸上養殖に係るコスト(設備投資、エネルギーコスト等)が高額であり、それに比例して生産した水産物の販売価格が高い事、販路面の課題、生産出来る魚種も限定される事も関連しています。しかし、今後に安定した水産物の生産を維持する為には、自然/天然由来に頼るだけではなく、陸上で人工的に水産物を生産する必要性を感じます。因みに、陸上養殖のサーモンを食した事のある知人の話では、脂がのっていて食感も良く、とても美味しかったとの事でした。私も機会があれば是非食べてみたいと考えています。

(担当:相馬 義輝)

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