今、自宅の寝室などに設置する耐震シェルターや耐震ベッドのニーズ調査の相談が多く、その情報収集を行っている。1月の能登半島地震に続いて8月には南海トラフ地震臨時情報が初めて発表され、住まいの安全性を見直す契機になったことが影響している。
耐震シェルターを設置した人の設置理由をみてみると、「1981年以前に建てた旧耐震基準の物件で、25年前から住んでおり、地震のたびに怖いと思いつつ先延ばしにしてきたが、能登半島地震で倒壊する家を見て必要性を感じ1階の寝室に耐震シェルターを設置した」と言っている。
他の人も、「住宅全体の耐震改修を検討したが、約300万円の費用と3ヵ月ほどの工期がかかり生活に支障をきたすため断念したが、寝ているときが一番怖いので、命だけでも助かればとベッドを囲む簡易なシェルターを購入した。設置工事は半日で終り、費用は約60万円だが補助金を活用したため自費は15万円ほどで済んだ」と言っている。
このシェルターは杉を使ったブロック建材を手掛ける「つみっく」(松江市)が開発したシェルターで、2階部分が落ちてきても耐えられる強度を持つという。15年前から販売しているが、今年の問い合わせは例年の2~3倍と急増している。耐震シェルターを手掛ける「扇光」(三重県伊勢市)も問い合わせが増えているとのこと。
部屋ごと耐震補強するタイプも需要が大きい。「ヤマヒサ」(大阪市)の地震対策セーフティールーム「シェル太くん」は、木造家屋の一部屋を鉄骨構造に改築する。ベッドを囲うだけのシェルターに比べて価格は高いが、いざという時に自宅の一部を避難所として使うニーズがあると言っている。
1981年の建築基準法改正で耐震基準が引き上げられ、震度6強~7でも倒壊しない耐震性を求められるようになった。国土交通省によると2018年時点で87%の住宅がこの基準を満たし、30年までには耐震化率をほぼ100%にすることを目指している。
2019年の調査によると、耐震改修をしない理由は「費用負担が大きい」(75%)、「古い家にお金をかけたくない」(44%)、など金銭面が上位2つを占める。その他は「耐震化しても大地震の被害は避けられない」「引っ越しがわずらわしい」が挙げられる。一般的に耐震改修は200万~300万円ほどかかり、自治体の補助金を使っても負担は大きい。
能登半島地震で耐震基準を満たさない家屋が多く倒壊したことを受け、国土交通省は8月に木造住宅の耐震化についてのマニュアルを初めて公表した。改修を原則としながらも、難しい場合は耐震シェルターの設置など部分補強を「暫定的・緊急的」な対策として促している。安価な耐震シェルターは的を絞った効率的な補強材として今後普及する可能がある。